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  • 執筆者の写真Motoki

監督・主演 平野誠樹

ガサガサと音を立てて、巨大な魔の手が襲いかかる。


無邪気な笑みを浮かべながら、冷淡かつ乱暴に襲いかかる。


まるでおとぎ話の巨大な魔物のようだ。


捕らえた罪なきターゲットを、狭い牢屋に閉じ込める。


そんな日常がそこにはあった。


マンションの隣にある草むらにいると、まるでジャングルにいるような感覚だった。


小学生のオレの小さい体が埋もれるほど、うっそうとした草に覆われたその空間。


そこにオレをさえぎるものは存在しない。弱者とそれを支配する独裁者。


まだまだ容易に動き回ることができたオレにとって、そこは楽園だった。


ハンディキャップがあるとか、対等に友だちとスポーツで競うことができないとか、あらゆる負い目から逃れて、まさにやりたい放題。


そう、バッタなどの虫取りをする事が、何よりも小学生の時は楽しくて仕方がなかった。


眩しい日差しをまともに受けながら、友だちと虫取りに明け暮れていた何気無い日々。


遠出が難しいオレにとって家の敷地のすぐ横に、最高の居場所があった。


あれ以上の自由を、未だかつて味わったことが無い。


きっとこれからも経験することはないと思う。なぜなら、あの草のに匂い、あの生き生きとしたバッタの躍動感、そしてあの感情達は、少年時代にしか遭遇できない、

たったワンテイクの映画のワンシーンだから。


それでも人は自由を求め続ける儚い生き物なんだろうな。

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