命がけのライフワークに必要な欲求ってなんだろう?有名人になりたい、金持ちになりたい、女にもてたい、何かの賞を獲得したい、可愛い子供のために頑張りたい、等々数え挙げればきりがないかもしれない。でも自分に必要な欲求はただ一つ、それは宿命を全うして朽ち果てること。そのミッションを達成するために食べるという欲求は捨てた。胃に針をぶっ刺して栄養を注入する穴を作り、管から生きるために必要なカロリーを流し込む。無理をすれば口からもう少し食べることは出来たが、その後にツバや痰が大量に湧き出て消耗する。体重は30キロを切った。生命の危機すら感じた。何よりもそんなことに時間を使っているのはもったいない。もちろん食べられないのは悔しいが、それ以上に電動車椅子サッカーに関わっていたいという思いのほうが数百倍勝る。
電動車椅子サッカーに出会ってから21年間。子供時代に勝ち負けを争うスポーツに取り組めなかったことは、スポーツを愛する自分にとっては残酷なことだった。不可能と思えていたことが、電動車椅子に出会い、電動車椅子サッカーと仲間に巡り合った事により、無限の可能性が広がった。必死で練習に取り組み、1日でも早く試合の先発メンバーになってやるという高いモチベーションを持って、スポーツに打ち込めていた。これは私にとっては、想像すらできなかったまさに奇跡的な出来事だった。

つづく
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